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【ブログ】火曜担当 CS(か)

2022-07-26

本日は幽霊の日、1825年の同日に、江戸の中村座で

四代目・鶴谷南北作の『東海道四谷怪談』が初演された事を由来に

幽霊の日と制定されました。『お岩』という幽霊の名前は

聞いたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

さて、今回は本誌ならびに弊社と関係のない

納涼にぴったりなお話しをさせていただきたいと思います。

皆様の気分転換等になれば幸いでございます。

少し怖い話になりますので、苦手な方はご注意ください。

(そんなに怖くはないですが…)


 

○合宿

通っていた大学の大部屋で合宿を行った、ある日の夜半の事です。眠りから覚醒した私の耳に入ってきたのは、小さな唸り声でした。

十数人で布団を並べ雑魚寝をしている中、時計は真夜中の3時ごろを示しておりました。常夜灯代わりにと点けた隣の談話室の灯りが部屋を照らしています。

声の正体を確認すると、唸り声のような、すすり泣きのような声は隣で眠っていた後輩のAちゃんが発していました。

誰とでもすぐ仲良くなり、明るい笑顔の絶えないAちゃんは、今まで聞いた事のない何かに怯えているような声で、頭まで布団を被り唸っています。

「Aちゃん、大丈夫?具合悪い?どうしたん?」

「い、え、ちゃうんです、その……木魚、が……」

言われてみれば、ポク ポクと何かを一定のリズムで叩くような音が聞こえました。

「大丈夫、配管の音ちゃうかなあ。上に大浴場もあるし、何も怖ないから、寝とき」

丸くなった布団を撫で続け、途中でAちゃんを挟んで眠っていた同級生のBちゃんが眠そうな顔で「大丈夫?」と聞いた以外に誰かが起きる様子はありません。朝方になったら少し眠らせてもらおうと考えながらぼんやりしていると、不意に周囲の様子がおかしい事に気付き、キーンと甲高い音が耳の中に響きました。

気付けば、部屋には大小様々な半透明のざらついた質感の影が浮遊していました。数えきれない影はゆらゆらと、こちらに何かするわけもなく、ただそこで漂っています。

先程まで確実に視認していなかったものですが、なんとなく恐怖を抱く事はありませんでした。離れたところで眠る同級生の上で上下に揺れる自販機ほどの赤子の影を眺めていると、開いているはずのない入口から、橙色に光る老婆の首がニタニタと笑いながらこちらへ転がるのが見えました。その瞬間、感じていなかった恐怖を思い出し、思わず目を瞑りましたが、瞬きの後には影も耳鳴りも、全て消えていました。

どうしてかその後の記憶がないのです。ただ、気付いたら朝だった事は覚えています。

 

既に皆は起床しており、お手洗いでも行っていたのか、数人の後輩と同級生が部屋に帰ってきました。その中にはAちゃんも居り、昨日の怯えが嘘のように楽しそうに笑っています。

「Aちゃん。昨日、あの後寝れた?」

「あの後?ああ先輩先寝ましたもんね、深夜ドラマ見た後普通に寝ましたよー」

「いやあ、寝れたんやったら良かったわ。なんやったんやろね、あの木魚の音」

「……木魚?」

「え?ほら昨日、夜中に寝れんって、木魚の音が怖いって」

「いや、いやいや先輩やめてくださいよー。昨日ぐっすりで起きてませんって!」

「いや、だって昨日、隣で……木魚が怖い、って」

「え……いや……昨日あたし、先輩の隣で寝てませんよ……?」

「おはよー。何の話ー?」

私たちの只ならない様子を見てか、昨日夜中に声をかけてくれたBちゃんが話に入ってきました。

「Bも昨日見たやろ?昨日夜中に……」

「ああ。(か)ちゃん座ってぼーっと上見てるから、何しとったん?寝れんかった?」

暑さによる汗とは異なる、じっとりとした嫌な汗をかいた事を今でも覚えています。

早くに寝てしまった私は知らなかったのですが、私の隣では、誰も寝ていなかったらしいのです。

では、あの怖いと震えていた彼女は、一体誰だったのでしょうか。

何故私は、布団で顔の見えない彼女をAちゃんだと思い込んだのでしょうか。

あの老婆は、一体何だったのでしょうか。

 

以上、私の体験談でした。

この合宿室には色々と不思議な体験をさせていただきました。

納涼には怖い話が定番ですね、少しでも涼んでいただければ幸いです。

 

それではまた、来週お会いいたしましょう。


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