イチローのバット
イチローの道具の扱い方
大リーグ史上の新記録・9年連続200本安打を狙っているイチローの野球の道具に関しては、侍が刀に対すると同じ扱い方をしているように見受けられます。試合が終われば、グラブの手入れはもちろん、バットの念入りな手入れをして、次の試合に臨みます。そんなある日、バッターボックスから塁に出たとき、ボックスの近くにバットがあったので、主審が足でバットを除けたことがありました。そのとき、イチローは珍しく主審に激しい言葉をぶつけました。彼にしてみれば、武士の魂ともいえる刀を足蹴にされた、そんな感覚だったのでしょう。いかに自分の大切な商売道具以上の打撃人の体の一部ともいえるバットをぞんざいに扱われたことによる怒りだったのでしょう。アメリカ人選手と異なるのは、単なるヒットを打つ棒というのではなく、専用バットをつくる職人にイチローがもっとも感触がよいものとしてつくらせたバットへの愛着があのような行為として出たのでしょう。ものとしてではなく、自己の存在を支えるものとして見ているのでしょう。こういったスポーツにかぎらず、日常生活のモノについての文章を「コラム歳時記」に載せています。
『コラム歳時記』 2009年8号131頁
【編集部.T】







